不動産の査定額に気を良くして契約してしまった事例
date_range2025/9/29
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三木市や小野市、明石市、神戸市で空き家の有効活用相談を行っている空き家有効活用株式会社の野村です。
先日ご相談いただいたケースから、今後の不動産売却や活用を検討される際に注意していただきたいポイントをお伝えします。
目 次
査定額に気を良くして契約してしまった事例
ご相談者様は一人暮らしをされているご高齢の方で、「あと2~3年ほどは自宅に住み続け、その後は妹が住んでいる街の公営マンションへ移りたい」とお考えでした。そこで私たちも訪問前に周辺の立地や環境を確認していたところ、某不動産サイトにすでに「売中古戸建」として掲載されているのを発見。
「もう売却を進めてしまっているのでは…?」と疑問を抱きつつご自宅を訪問し、お話を伺いました。すると、実際に不動産会社4社へ査定を依頼し、一番高い金額を提示した会社とすでに媒介契約を結んでいるとのことでした。
査定額を聞いたときは「思ったより高く売れそうだ」と気持ちが盛り上がり、そのまま売却活動を進めてしまったそうです。しかし、ここで大きな問題が浮かび上がりました。
家族で意見が食い違うと不動産売却は進まない
ご相談者様は「数年後に妹の住むマンションへ移りたい」と考えている一方で、妹さんは「自分の定年後に、この実家に戻って住みたい」と考えていたのです。
つまり、売却する方向で話を進めているご本人と、将来その家に住むつもりでいる妹さんとで、方向性が180度食い違っていました。
もしこのまま買い手が見つかってしまった場合、購入希望者に対して「引き渡しを数年後まで待ってください」とお願いしなければならず、現実的に契約が成立しにくい状況になります。さらに妹さんから「売却しないでほしい」と言われれば、契約自体が破綻するリスクすらあります。
私たちは「まずは妹さんとしっかり話し合い、方向性を一致させたうえで売却か活用かを決めることが先決です」とお伝えしました。そして、結論が出るまでは売却活動をストップし、不動産会社へもその旨を連絡しておくように助言しました。
不動産売却は家族間での意見の食い違いが意外と多い
このケースは特別なことではありません。実際に不動産のご相談を受けていると、親子間・ご夫婦間・ご兄弟間などで「家をどうするか」の考えが全く違うことは珍しくないのです。
「子どもは売却して資金に充てたいと思っているが、親は住み続けたい」
「夫婦で片方は賃貸活用を望んでいるが、もう片方は売却を希望している」
こうしたケースでは、話が進んでいるように見えても実際には同意が取れず、結果的に何も進まないことが多々あります。さらに、手続きを進める途中で対立が表面化すれば、契約トラブルや家族関係の悪化につながることもあり得ます。
空き家・持ち家の活用を考える前に家族で方向性を決めよう
不動産は一度動かすと大きな影響を及ぼします。だからこそ、まずはご家族間でしっかりと意思を確認し合うことが何より大切です。
「こんな風に考えているんだけど」
「将来はこうしたいと思っているんだけど」
こうした率直な会話をしていただくだけで、その後のご相談もぐっとスムーズになります。万が一方向性が一致しなかった場合でも、私たちがそれぞれのメリット・デメリットを整理し、選択肢を提示することでご家族の意思決定をサポートできます。
まとめ|不動産売却の成功は「家族の合意形成」がカギ
今回のケースでは、ご相談者様は「家がいくらで売れるか」を知りたかっただけでしたが、気づけば売却まで進んでしまっていました。そして妹さんとの考えの違いにより、早ければ契約トラブルにもつながりかねない状況となっていたのです。
このように、不動産の売却や活用は「ご家族の方向性が揃っているかどうか」が最も重要なポイントです。査定額や契約条件に目を奪われる前に、まずはご家族で将来像を話し合ってください。その上で私たちのような専門家にご相談いただければ、安心して次のステップへ進めることができます。
コラム担当者プロフィール
野村 和弘
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学卒業後、医療機器商社で営業を経験し、不動産業界へ転身。
賃貸仲介・管理を経て宅建士を取得し、売買や注文住宅の提案にも携わってきました。実家の不動産で悩んでいる方、空き家や相続の不安を抱える方と一緒に考え、丁寧に向き合うことを大切にしています。
「頼んでよかった」と言っていただける瞬間が、この仕事のやりがいです。
