家賃滞納・連絡不能の借主に直面した空き家オーナーの実話
date_range2025/10/06
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三木市や小野市、明石市、神戸市で空き家の有効活用相談を行っている空き家有効活用株式会社の野村です。
目 次
「自力救済」という言葉を聞いた事ありますか?
自力救済とは、司法手続きを経ずに自らの力で権利を実現しようとすること。
たとえば、賃貸している部屋の借主が家賃を滞納して出ていかない場合に、家主が勝手に部屋の鍵を開けて荷物を撤去する。これがまさに「自力救済」にあたります。
今回は、実際に当社へ寄せられた「自力救済」に関わるご相談事例をご紹介します。
ご相談内容:滞納・不在の借主、連絡も取れない…
ご相談者様は分譲マンションのオーナー。
以前、賃貸契約を結んでいた借主が昨年から家賃を滞納しており、訪問しても不在。
連絡先として聞いていた身内の住所や電話にも反応がなく、「このマンションを処分したいが、どうしたら良いか」とのご相談でした。
当初、私たちは「法的手続きが必要な可能性が高い」とお伝えしつつも、まずは現状の確認を優先することに。訪問も電話もつながらないため、次のステップとして「書留郵便(簡易書留)」で書面を送付することを提案しました。
受取があれば居住中、返送されれば不在と判断できるからです。
結果、数日後に郵便は「宛先不明」で返送。
そこで、以前お世話になった弁護士に相談する流れになりました。
弁護士の調査でわかった意外な事実
弁護士を通じて調査を進めた結果、借主は現在「他県の施設に入所している」ことが判明。
ようやく居所が分かりましたが、ここからが本題です。
ご相談者様が「では鍵を開けて荷物を片づけてもいいですか?」と尋ねたところ、弁護士の答えは明確でした。
「それは自力救済にあたるので、違法です。
勝手に室内へ立ち入ったり、荷物を撤去した場合、損害賠償を請求される恐れがあります。
訴訟をおこし、判決をうけ、強制執行により荷物の撤去といった流れになるかと思われます。」
つまり、たとえ自分の所有する物件であっても、借主の同意なしに立ち入ることは法律で禁止されているのです。
ご相談者様は「自分のマンションなのに、なぜ?」と落胆されましたが、法的には「契約関係が続いている間は、借主の占有権が優先される」という原則があるため、強制的に明け渡してもらうには、訴訟・判決・強制執行という正式な手続きを踏む必要があります。
空き家オーナーが知っておくべきポイント
このようなケースは珍しく思えるかもしれませんが、実際には高齢化や単身世帯の増加により、賃貸トラブルから空き家化する事例は増えています。
今回のように、借主が滞納・不在・連絡不能となると、感情的に「もう自分のものだから片づけよう」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、民法では「法による救済こそが原則」です。
自力で部屋を開けたり、荷物を動かしたりする行為は、たとえ善意であっても違法とみなされる可能性があります。
このような事態に陥った場合は、
- まずは、書面での通知(書留郵便)で意思を伝える
- それでも反応がなければ弁護士や専門家に相談する
- 法的手続き(訴訟・強制執行)の流れを確認する
この3ステップを踏むことが、安全かつ確実な対応となります。
まとめ:焦らず、正しい手続きを
今回のご相談は、空き家になる一つの「特殊ケース」かもしれません。
しかし、もしも同じように「滞納」「不在」「連絡が取れない」などの状況に直面したときは、独断で室内に立ち入ったり、荷物を撤去したりしないことが最重要です。
自分の財産を守るためにも、まずは冷静に、そして専門家へ相談する勇気を持つことが解決への第一歩です。
空き家有効活用株式会社では、こうした法律や契約に関わるトラブル事例も踏まえ、オーナー様の不安を少しでも軽くできるよう、情報発信とサポートを続けてまいります。
コラム担当者プロフィール
野村 和弘
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学卒業後、医療機器商社で営業を経験し、不動産業界へ転身。
賃貸仲介・管理を経て宅建士を取得し、売買や注文住宅の提案にも携わってきました。実家の不動産で悩んでいる方、空き家や相続の不安を抱える方と一緒に考え、丁寧に向き合うことを大切にしています。
「頼んでよかった」と言っていただける瞬間が、この仕事のやりがいです。
